FATF: 金融犯罪対策における中核的な国際機関

金融活動作業部会 (FATF) とは

金融活動作業部会 (FATF) は、マネーロンダリング対策 (AML)、テロ資金供与対策 (CFT) をはじめとする、国際金融システムに対する各種脅威への対応を目的とする政府間会合です。FATF は 1989 年に主要 7 か国 (G7 (英語) ) により設立され、金融システムの悪用を防ぐため、国際基準を策定し、法制度、規制、実務運用上の措置の実効的な導入を促しています。

FATF は、各国が連携して金融犯罪対策を推進するための枠組みを設計・モニタリングする国際的な機関と捉えることができます。例えば、統一的なガイドラインを策定することで、顧客デューデリジェンス (CDD) や金融取引の監視といった実務の標準化を実現しています。

金融機関から政府当局に至るまで、金融分野に関わる者にとって、FATF のガイドラインや各種リストに精通することは不可欠です。FATF の影響力が、規制遵守、各国・地域の金融関連法規、さらには個々の銀行業務にまで、世界規模で及んでいるためです。

FATF の主な役割

FATF には、主に以下の 5 つの役割があります。

1. AML/CFT 基準の策定
FATF は「40 の勧告」という国際的なガイドラインを策定しており、加盟国・地域は、これをそれぞれの法的枠組みに反映することが奨励されています。 

2. FATF 勧告の公表
「40 の勧告」は、世界的な AML/CFT コンプライアンス政策の根幹を成すものです。
例: 英国で業務を行う金融機関は、FATF のガイドラインに準拠した英国のマネーロンダリング規則 (MLR 2017 (英語)) などの法令を遵守する必要があります。 

3. 相互審査の実施
FATF は、各国が FATF の基準をどの程度遵守しているかを評価するため、ピアレビュー方式による詳細な審査を実施しています。
例: 良好な審査結果は外国投資家の信認を高める一方、否定的な指摘は経済面での悪影響につながる可能性があります。 

4. グレーリストおよびブラックリストの管理
FATF の基準を満たさない国・地域は、FATF のグレーリストまたはブラックリストに掲載される可能性があり、その場合、当該国・地域の国際関係や金融面での信認に直接的な影響が及びます。 

5. リスクベース・アプローチの推進
FATF の方針は、画一的な対策を求めるのではなく、リスクを把握し低減することを重視しており、各国・地域における対策の実施方法については柔軟性を認めています。

FATF リスト: グレーリストとブラックリストの概要

FATF は、基準を遵守していない国・地域を明示するため、2 種類の重要なリストを管理しています。

グレーリスト (強化モニタリング対象国・地域)
このリストに掲載された国・地域は、世界規模の脅威をもたらすとまでは言えないものの、AML/CFT 措置に脆弱性があると判断されています。グレーリスト入りは、多くの場合、ブラックリストへの移行を回避するための改革が必要であることを示します。
例: グレーリストに掲載された国・地域では、世界の金融機関との取引関係に制約が生じることがあります。

ブラックリスト (戦略上の欠陥を有する高リスク国・地域)
FATF 基準の重大な不遵守が認められる国・地域は、このリストに掲載されます。ブラックリスト入りすると、国際貿易、金融へのアクセス、外国投資の機会が制限されます。

レピュテーションへの影響: 金融機関は、ブラックリスト掲載国・地域が関与する取引を極めて高リスクと分類し、関連する業務や取引の実行を回避する可能性があります。
経済的影響の例としては、世界的な銀行ネットワークへのアクセスの制限や、信用格付けの悪化などが挙げられます。

FATF の「40 の勧告」

金融システムの安全性を確保するための設計図

金融犯罪対策の国際基準として公表された FATF の「40 の勧告」は、主に以下の 4 つの分野に分類されます。

  1. リスクベース・アプローチ: FATF のガイダンスは、金融機関に対し、画一的な対策ではなく、リスクを評価して柔軟に低減措置を講じることを求めています。
  2. 実質的支配者の透明性: 法人は、ペーパー・カンパニーを通じて不正資金が隠匿されることを防ぐため、所有権構造を開示する必要があります。
  3. 顧客デューデリジェンス (CDD): 金融機関は、顧客の身元を確認し、検証する責任を負います。
  4. 世界的な協力: 各国は、国境を越える金融犯罪を阻止するため、情報共有において協力する必要があります。

実務での適用例: FATF の基準を遵守することで、金融機関は、複雑なマネーロンダリング・スキームが進行する前に、疑わしい取引や活動の兆候を検知しやすくなります。LSEG のリスク・インテリジェンスが提供するソリューションなどは、包括的な顧客スクリーニング機能を通じて、金融機関を支援することができます。

FATF の加盟国・地域と構成

加盟状況の概要

FATF の加盟メンバーは、米国、英国、欧州連合 (EU)、中国、インドを含む 39 か国・地域 (英語) ですが、その影響力は世界 200 以上の法域に及んでいます。非加盟国・地域の多くも、貿易や金融へのアクセスを促進するため、FATF の基準に沿った制度整備を進めています。

地域機関との連携

FATF は、MONEYVAL (英語) や APG などの関連地域機関と緊密に連携し、地域横断的な協力体制の円滑化を図っています。

影響力の例: FATF への加盟は各国の金融犯罪対策の枠組みを形成する上での発言力を高め、貿易関係や外国投資の流入にも直接的な影響を及ぼします。

世界的な規制遵守における FATF の役割

FATF 勧告の遵守は、国際資本市場へのアクセスを確保する上で極めて重要です。遵守しない場合、制裁、国際的な信認の低下、事業上の制約につながる可能性があります。

国内法制への影響: FATF 勧告は、世界各国の金融犯罪対策規制の根幹を成しています。

  • 英国: 2017 年マネーロンダリング規則
  • 米国: 銀行秘密法 (Bank Secrecy Act)
  • EU 諸国: マネーロンダリング防止指令 (AMLD (英語))

金融機関への影響

世界各国の金融機関は、FATF の基準に沿って自社の AML 方針を整備しています。

  • 金融機関は、FATF のリスクベース・アプローチに基づき、顧客分類の手法を精緻化しています。
  • 定期的な疑わしい取引報告 (SAR) は、FATF の運用原則に沿って作成されます。
  • 高度化された取引モニタリング技術により、FATF 勧告で求められる事項の遵守が確保されます。

こうした枠組みは、金融行為監視機構 (FCA) や金融犯罪取締ネットワーク (FinCEN) などの国際的な規制当局からの信頼形成に寄与し、国際市場における金融機関の信頼性向上につながります。

FATF と AML 基準の進化

FATF 勧告は、新たに顕在化する脅威に対応して進化しており、重大なリスクに対する強靭性を確保しています。

  • 暗号通貨: 暗号資産サービス・プロバイダー (VASP) (英語) 向けのガイドラインは、暗号通貨の悪用機会を低減することを目的としています。
  • 環境犯罪: 天然資源の開発・搾取に関連する金融犯罪の防止がますます重視されるようになっています。
  • 官民連携: 政府と民間主体の連携により、インテリジェンスの共有が実現されています。

進化し続けるガイドラインに先回りして対応できるよう、LSEG のリスク・インテリジェンスのソリューションは、金融機関にスクリーニングおよびモニタリングに関する包括的な知見を提供し、こうした複雑な課題への対応を支援します。

よくある質問

  • 金融活動作業部会 (FATF) は、マネーロンダリング対策 (AML)、テロ資金供与対策 (CFT) など、金融システムに対する脅威に対抗すべく、1989 年に設立された政府間会合です。FATF の主な役割は、世界的な基準を策定し、その効果的な実施を促進することで、国際金融システムの安全性を確保することにあります。

  • FATF は、各国および金融機関が自らの対策の枠組みに採用する国際的な AML 基準を策定する上で、極めて重要な役割を担っています。FATF は、遵守状況を監視し、基準を満たしていない法域を特定するとともに、違法行為が金融システムに入り込むことを防ぐための協調的な取り組みを推進しています。

  • FATF の「40 の勧告」は、マネーロンダリングやテロ資金供与などの金融犯罪に対抗するための、世界的に認められた枠組みです。これらの勧告は、リスクベース・アプローチ、顧客デューデリジェンス (CDD)、実質的支配者情報、制裁措置の執行、国際協力などを対象としており、世界各国の AML/CFT 規制の基盤となっています。

  • FATF のグレーリストには、AML/CFT の枠組みに戦略上の欠陥があると判断され、強化モニタリングの対象となっている国・地域が含まれます。これらの国・地域は、指摘された脆弱性を速やかに是正することを確約しなければなりません。グレーリスト入りは、金融リスクの存在を示唆し、レピュテーションの低下や、国際投資の抑制につながる可能性があります。

  • FATF のブラックリストには、AML/CFT に重大な欠陥があり、FATF の基準を満たしていない高リスク国・地域が掲載されます。ブラックリスト入りすると、金融市場へのアクセス低下、国際貿易上の制約、国際的な制裁措置など、重大な経済的不利益につながる可能性があります。

  • FATF には、英国、米国、中国、インド、EU などの主要国・地域を含む 39 の正式メンバーが加盟しています。しかし、その影響力は地域機関との連携を通じて 200 以上の法域に及んでおり、FATF 基準の世界的な遵守を支えています。

  • FATF のグレーリストに掲載された国・地域には、レピュテーションの低下、国際的な金融業務の制約、国際金融機関による審査・監視の強化といった影響が生じます。これらの国・地域は厳格なモニタリングの対象となり、AML/CFT 措置における不備を是正するための改革の実施を求められます。

  • FATF の基準を満たさない国・地域は、グレーリストまたはブラックリストに掲載される可能性があります。その結果、外国投資の抑制、規制当局による監視強化、さらには国際金融システムからの孤立につながるおそれがあります。FATF は遵守状況の改善に向けた是正措置に関するガイダンスも提供しています。

  • FATF は、AML/CFT に対する世界的に統一されたアプローチを推進するため、各国の金融犯罪関連法令を「40 の勧告」に沿って整備するよう促しています。英国、米国、EU など、多くの法域では、FATF の基準が国内政策に組み込まれています。

  • FATF は、AML/CFT に関わる基準の遵守を主導する世界的機関として、基本的な基準の策定、進展状況のモニタリング、金融犯罪対策に取り組む各国への支援を行っています。FATF の活動は、マネーロンダリングやテロ資金供与のネットワークを世界的に抑止することにつながっています。

  • FATF は、暗号通貨がマネーロンダリングやテロ資金供与に利用されるリスクに対処するため、暗号資産サービス・プロバイダー (VASP) 向けの具体的なガイダンスを公表しています。また、デジタル資産に AML/CFT の管理措置を適用し、こうした技術が犯罪目的で悪用されないよう、各国に対応を促しています。

  • いいえ。FATF は独立した機関ですが、国連やその他の国際機関と連携し、AML/CFT に関する取り組みを実施しています。こうした連携は、世界経済の安定を支え、金融システムの健全性を高めることにつながっています。

  • FATF は、概ね 5 年ごとに実施される相互審査を通じて、各国の遵守状況を評価しています。審査では、法的枠組み、政策の実施状況、運用上の有効性などを検証し、FATF の基準との整合性を確認します。

  • FATF は、包括的な AML/CFT 基準を策定し、その遵守を徹底させることを通じて、金融犯罪防止に向けた世界的な取り組みを主導しています。この取り組みにより、各国および金融機関が、マネーロンダリング、テロ資金供与をはじめとする金融上の脅威に対して、強固な防御態勢を維持できるようになります。

  • 金融機関は、顧客デューデリジェンス (CDD)、リスク分類、取引モニタリングなどの効果的な AML プロセスを構築する指針として、FATF 勧告を活用しています。FATF の原則を遵守することで、金融機関は世界的な信認を獲得するとともに、規制リスクの低減を図ることができます。

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