AML: 金融犯罪コンプライアンスの基盤

AML (マネーロンダリング対策) とは

マネーロンダリング対策 (AML) とは、金融機関が不正資金の洗浄を検知・防止するために用いるポリシー、法令、プロセスの総称です。AML には、顧客オンボーディング時の本人確認や、金融取引のモニタリング、疑わしい取引の当局への報告といった AML チェックが含まれます。AML の目的は、犯罪者が不正に得た資金を合法的な収入として偽装することを防ぐとともに、麻薬取引、脱税、テロ資金供与等の犯罪に対処することにあります。

たとえば、犯罪者が不動産などの高額資産を購入して不正資金の洗浄を試みた場合、強固な AML コンプライアンス態勢があれば、こうした不審な取引を検知し、金融システムのさらなる悪用を阻止することができます。

 

金融サービスにおいて AML が重要な理由

金融業界はマネーロンダリングの標的になりやすく、こうした行為は金融システムの健全性と信頼性を大きく損なう重大な金融犯罪です。効果的な AML が実施されない場合、以下のようなリスクがあります。

  • 犯罪者が金融システムを悪用し、テロへの資金供与を行う。
  • 企業がコンプライアンス違反により、高額な制裁金を課され、レピュテーションの毀損 (評判の低下) を招くおそれがある。
  • 不正な資金フローによって経済が不安定化し、経済全般に悪影響がおよぶ可能性がある。

たとえば 2020 年には、あるグローバル銀行が、疑わしい取引を検知できなかったとして、数十億ドル規模の制裁金を支払いました。この事例は、こうしたリスクに対処し、不正資金の流入から社会を守るには、強固な AML 規制が不可欠であることを示しています。

AML プログラムの主要構成要素

実効的な AML プログラムでは、以下のような対策を通じてマネーロンダリングの検知・防止を図ります。

  1. 顧客デューデリジェンス (CDD): 金融機関による、顧客確認 (KYC) プログラムを通じて行う特に高リスク顧客の本人確認
  2. モニタリングと報告: 高度なシステムを活用することで、疑わしい金融取引の追跡や検知を支援
  3. AML 研修: 通常とは異なる不審な取引行動を認識できるよう従業員をトレーニング
  4. AML スクリーニング・ツール: 自動化されたツールにより、AML 規制に沿って、違法行為に関与している個人・法人等を特定

LSEG リスク・インテリジェンスのスクリーニング・ツールのような最新技術は、グローバルな金融コンプライアンスに対応した統合システムを提供することで、こうしたプロセスを支援します。

各国・地域における AML 規制

AML 規制の内容は国・地域によって異なりますが、金融犯罪に対処するという基本的な目的は共通しています。政府間組織である金融活動作業部会 (FATF) が出す勧告は、世界各国で採用されています。国・法域別には、以下のような例があります。

  • 米国では、2020 年 AML 法により、こうしたマネーロンダリング対策が強化されている。
  • EU の第 6 次マネーロンダリング防止指令は、加盟国の AML 対応を調和させることを目的としている。

金融機関は、各国・地域の規制動向を常に把握し、適切なコンプライアンス対応を行う必要があります。

マネーロンダリングの 3 つの段階を理解する

一般に、マネーロンダリングは次の 3 段階を経て展開します。

  1. プレースメント: 不正資金が小口預金や資産購入などを通じて金融システムに流入する段階
  2. レイヤリング: 複数の口座や法域をまたぐ送金など、複雑な金融取引を重ねることで、資金の出所を不透明にする段階
  3. インテグレーション: 不正資金が、投資や事業活動を隠れ蓑にして、合法的な経済活動の中に再び組み込まれる段階

レイヤリングの例としては、不正に得た利益の出所を分かりにくくするために、海外口座を経由して資金を繰り返し移動させる手口が挙げられます。こうした動きを早期に検知できなければ、犯罪者が不正収益を利用できる状況を許してしまう可能性があります。

AML における主なレッドフラッグ (危険信号) とリスク

金融サービスに従事する者は、疑わしい活動の兆候に常に注意を払う必要があります。主な危険信号としては、以下のようなものがあります。

  • 顧客デューデリジェンス (CDD) の過程で、顧客の行動に一貫性が見られない。
  • 多額の不規則な現金預け入れや、届出基準額をわずかに下回る取引 (いわゆるスマーフィング) が頻繁に行われる。
  • AML 規制が脆弱な高リスク国・地域に関連する口座が利用されている。
  • 顧客が正確な本人確認書類の提供を渋る。

金融機関はこうしたリスクに常に注意を払うことで、金融犯罪を早期に検知し、未然に防ぐことができます。

AML 関連資格・認定の取得

AML 関連資格を取得することは、金融犯罪コンプライアンスに関する専門性を持つことの証となります。公認 AML スペシャリスト (CAMS) などの代表的な資格講座では、業界で求められる審査・検証実務の基礎を学ぶことができます。金融犯罪コンプライアンスに携わるプロフェッショナルは、キャリアアップと所属組織のコンプライアンス強化の両面から、こうした資格の取得を目指すことがあります。

コンプライアンス違反がもたらす影響

AML 規制を遵守できない場合、金融機関には以下のような重大な結果が生じる可能性があります。

  • 高額な制裁金: Danske Bank の不祥事 (英語)  のような事例は、AML 規制違反が巨額の金銭的負担につながりうることを示しています。
  • レピュテーションの毀損 (評判の低下): 管理態勢の不備が明るみに出れば、企業のブランド価値は大きく損なわれます。
  • 法的責任: コンプライアンス違反は訴訟などの法的措置につながる可能性があります。

近年の数多くの重要事例は、強固な AML プログラムが世界的に必要であることを示しています。

LSEG の AML 対応: AML ソリューション

LSEG の World-Check KYC スクリーニング・ソリューションは、企業のマネーロンダリング対策 (AML) や顧客デューデリジェンスに関する義務への対応を支援します。同ソリューションは、顧客オンボーディングやモニタリング、是正対応プロセスを効率化するために設計されており、制裁リスト、ウォッチリスト、重要な公的地位を有する者 (PEP)、アドバース・メディア (ネガティブ・ニュース) を網羅する、信頼性の高い構造化されたデータへのアクセスを提供します。

World-Check One は高度にカスタマイズ可能なスクリーニング・ワークフローを備えており、企業はリスクベースの管理を自社のニーズに応じて最適化し、誤検知を削減し、業務効率を向上させることができます。同ソリューションは API を通じて既存システムと容易に連携でき、バッチ・スクリーニングとリアルタイム・モニタリングの両方に対応しています。

世界中の金融機関や政府機関、規制対象企業で利用されている LSEG の AML テクノロジーは、潜在的なリスクの特定、マニュアル作業の削減、規制当局の要求の変化に応じたコンプライアンス強化をサポートしています。

よくある質問

  • AML とは、マネーロンダリングの手法によって違法な収益が生み出されるのを防ぐことを目的とした、規制、法令、手続きを指します。AML は、企業や金融機関が不正な金融活動に関連するリスクを検知し、報告し、低減できるようにするものです。AML 対策は、詐欺、汚職、テロ資金供与などの不正行為への対応を目的としています。

  • AML 規制の主な目的としては、以下が挙げられます。

    • 不正資金の流れを検知し、防止すること。
    • 国際金融システムの健全性を保護すること。
    • 金融犯罪に関連するリスクや取引・行為を特定すること。
    • 金融取引の透明性を向上させること。
  • マネーロンダリングのプロセスは、主に以下の 3 段階に分けられます。

    1. プレースメント: 不正資金が金融システムに流入する段階
    2. レイヤリング: 複雑な取引を重ねることで、資金の出所を偽装・隠蔽する段階
    3. インテグレーション: 不正資金が一見合法化された形で経済活動に再び組み込まれる段階

    たとえば、違法行為で得た現金を銀行へ預け入れ (プレースメント)、資金の出所と直接関係のない複雑な取引を行い (レイヤリング)、その後不動産投資などを行う (インテグレーション) といった流れが考えられます。

  • 銀行は以下のようなプロセスを通じて AML 対策を行います。

    • 顧客デューデリジェンス (CDD): 顧客の身元を確認する (KYC – 顧客確認)。
    • 取引モニタリング: 通常と異なる取引や疑わしい取引を追跡する。
    • 疑わしい取引報告 (SAR): 疑わしい取引・行為について、関連当局に報告する。
    • AML スクリーニング・ツールや取引分析などのテクノロジーを活用し、規制対応や不正検知を行う。
  • 主なレッドフラッグとしては、以下が挙げられます。

    • 届出基準額を下回る現金取引が頻繁に行われる。
    • ストラクチャリングまたは「スマーフィング」 (取引を小口に分割する手口)。
    • 取引パターンに急な変化が見られる。
    • 高リスク国・地域、または重要な公的地位を有する者 (PEP) との間で資金移動が行われている。
  • スマーフィングとは、ストラクチャリングの一種であり、多額の不正資金を少額に分割して検知を回避しようとする手口を指します。こうした少額の預け入れは、AML 上の届出基準にかからないよう、報告義務が生じる基準額を下回る金額で行われることが多くあります。

  • マネーロンダリング対策法は、金融犯罪規制とコンプライアンス要件を強化するものです。近年の改正法では、テクノロジー活用の高度化や、グローバルな課題への対応、ステークホルダー向けのリアルタイム報告の導入などを目的とした規定が盛り込まれる傾向にあります。

  • 主な義務としては、以下が挙げられます。

    • コンプライアンス・プログラム: AML に重点を置いた社内ポリシーの整備
    • 定期的な監査と報告: 疑わしい取引報告 (SAR) などの当局への提出
    • 取引の精査: リスクベースの保護管理手法の組み入れ
  • AML 法令は、国・地域に応じて、さまざまな機関により執行されています。

    • グローバル・レベル: 金融活動作業部会 (FATF)
    • 地域レベル: EU のマネーロンダリング防止指令 (AMLD)
    • 各国レベル: 金融取引業規制機構 (FINRA、米国)、金融行動監視機構 (FCA、英国)、オーストラリア取引報告分析センター (AUSTRAC) などの機関
    • AML は KYC よりも広範な概念で、マネーロンダリングの検知、モニタリング、防止が含まれます。
    • KYC は AML の重要な下位概念であり、顧客の本人確認に重点を置いています。
  • 公認 AML スペシャリスト (CAMS) など、多くの AML 関連資格では、通常以下の手順を踏みます。

    • 実務経験や受験資格に関する要件を満たす。
    • 必要な講座または研修を修了する。
    • 所定の AML 試験に合格する。
  • 金融活動作業部会 (FATF) は、以下を通じて国際的な AML 基準を策定する役割を果たしています。

    • 世界各国・地域向けのガイドラインを公表。
    • コンプライアンス・プログラムを評価。
    • コンプライアンス違反に対して、制裁やレピュテーション毀損 (評判の低下) などの影響が生じ得ることを示す。
  • AML スクリーニングツールは、以下のような主要機能を通じて、組織が金融犯罪リスクをモニタリングし低減できるよう支援することを目的としています。

    • 顧客情報を、PEP リスト、制裁データベース、アドバース・メディア情報源などを含むウォッチリストと自動照合。
    • 顧客取引を継続的にモニタリングし、異常な動きを検知して潜在的リスクにフラグを立てる。
    • 高度な AI を活用し、取引などのパターンを特定し、デューデリジェンスの強化、潜在的なリスクの予測を行う。

    LSEG World-Check などの AML ソリューションは、包括的なグローバルデータと最先端の分析機能を組み合わせることで、規制要件への円滑な対応を支援します。World-Check は、制裁、PEP、アドバース・メディアに関する広範なグローバル・モニタリングを構造化されたデータと組み合わせることで、顧客スクリーニングとリスク評価のワークフロー効率化を実現します。

  • たとえば次のようなものが含まれます。

    • 顧客オンボーディング前に自動化ツールを用いて顧客スクリーニングを実施する。
    • AML 分析を活用し、急速な資金移動などの疑わしい取引パターンを特定する。
    • 規制対応の一貫性を確保するため、監督・規制当局間で緊密に連携する。

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