AI をあなたの強みに: AI で生産性を高める

要旨

金融業界において AI への投資が加速する一方、多くの企業が、AI の価値を最大限に引き出せる領域を見極めようとしています。AI がリサーチ、分析、意思決定のワークフローにますます組み込まれる中、金融プロフェッショナルにとって、実践的な AI スキルを身につける機会が広がっています。本記事では、AI を活用した機能が、生産性の向上やより的確な意思決定、信頼できるデータからのさらなる価値の創出にどのように役立つかをご紹介します。


ソーシャルメディアでは、企業がワークフローを自動化し、AI エージェントを導入することで、毎週数時間を他の業務に充てられるようになるなど、人工知能 (AI) によって業界が一変したかのように語られることが少なくありません。しかし、実情はそれほど単純ではありません。「AIについては、取り残されることへの強い不安が実際にあります」と、Microsoft の Principal Software Engineer で、現在 LSEG Analytics & AI の Product and Engineering を率いる Sahana Prabhakar は次のように述べています。「オンライン上の議論を見ていると、あらゆる組織がすでに AI の活用方法を確立しているかのように思えるかもしれません。しかし実際には、何が有効なのか、どこに価値があるのか、そしてそれらをいかに効果的に拡大していくかについて、多くの組織がまだ模索している段階です」

一方、現場の実態は大きく異なります。 Cambridge Judge Business School が 2026 年 4 月に実施した調査 (英語)によると、世界の従来型金融機関の約 65% は AI の活用について検討または試験導入の段階にあります。一方、24% は活用を拡大している段階にあり、変革の段階に達しているのはわずか 6% でした。また、回答者の 5% は、AI への取り組みが非常に限定的、またはまったく行われていないと回答しています。

さらに同調査からは、従来型金融機関で働くプロフェッショナルによる AI への取り組みが、必ずしも十分に進んでいないことも明らかになっています。約 47% が従業員の準備状況は限定的であると回答し、8% は準備ができていないと回答しました。一方、ある程度準備ができていると回答したのは 41% で、十分に準備ができているとの回答はわずか 4% でした。

金融業界で働くプロフェッショナルにとって、AI がもたらす本当の機会とは、組織全体で AI プログラムが導入されれば、すぐに得られるというものではありません。今から身につけることができ、活用を重ねるほど高めていける個人のスキルなのです。

AI スキルを鍛える

Sahana は、金融業界で働く人々に対し、より価値の高いユースケースに進む前に、まずは AI テクノロジーに慣れ、日常的に使いながら、「スキルを鍛える」ことを勧めています。これは一度きりの研修で身につくものではありません。他の専門的なスキルと同様に、繰り返し、フィードバック、改善を重ねることで身につく習慣です。 AI から最大のメリットを得るのは、組織全体への導入を待っている人ではなく、それまでに AI を使いこなす力を身につけている人でしょう。

自身のワークフローから始める

AI の活用は、大規模な変革プロジェクトから始める必要はありません。金融プロフェッショナルは、まず自身の 1 週間の業務を振り返ることから始められます。まずは、体系的なリサーチ、情報の整理・統合、一定のパターンに沿った文書作成など、多くの時間を要する業務から取り組むのがよいでしょう。「金融業界のプロフェッショナルは、『AI を活用することで、どこまで効率や生産性を高められるだろうか』と自問する必要があります」と Sahana は述べています。「実際に使い始め、何が可能なのかを確かめてみなければ、自分に何ができるのかは分かりません。そして、『時間を節約できただろうか。有益なインサイトに基づいて意思決定できただろうか、あるいは潜在的なリスク事象を軽減できただろうか』と自問してみてください」

お客様が AI を活用してデータからより多くのインサイトを得るようになる中、LSEG は Workspace における AI 機能の開発を継続しています。AI Search は 7 月に一般提供を開始し、現在 17,000 人のアクティブユーザーが利用しています。また、より高度な分析やレポート作成向けに設計された Deep Research は、7,000 人のユーザーに利用されています。これらのツールは、Workspace のその他の機能とともに、金融プロフェッショナルが自身のリサーチや準備作業のワークフローに AI を取り入れる方法を示しています。

LSEG Workspace の以下の 3 つのツールは、こうした AI の具体的な活用方法を示しています。

  • LSEG Workspace の Deep Research を活用して、金融プロフェッショナルは Datastream を含む LSEG の信頼性の高いデータセットを用いて詳細な分析を行うことができます。この AI ツールは金融業界の用語を理解し、その文脈を踏まえて質問に回答することができます。
  • Company Intelligence は、生成 AI と LSEG のデータを活用し、金融プロフェッショナルが会議の準備を迅速かつ容易に行えるよう支援する、新しい Workspace エージェントです。関連情報を 1 つの画面に集約することで、会議準備にかかる時間を大幅に短縮できます。
  • LSEG Workspace Search のチャットベースの機能では、金融プロフェッショナルが、トランスクリプト、開示書類、ブローカー・リサーチ、ニュースなどの構造化データと非構造化データを直接検索できます。その基盤となるインテリジェンス層は、Microsoft Teams でも利用可能です。

これらの AI 機能は、LSEG と Microsoft のパートナーシップを通じて開発されたもので、LSEG の信頼性の高い金融データ、ワークフロー、専門知識と、Microsoft の AI およびクラウド技術を組み合わせることで、金融プロフェッショナルが日常的に利用する既存のワークフローの中で AI を活用できるよう支援します。

人による判断は引き続き不可欠

これらはいずれも人による判断に取って代わるものではなく、むしろ金融プロフェッショナル自身の判断が必要となる領域をより明確にするものです。金融業界においては、AI の出力を照合・確認せずに過度に依存することは、現実的なリスクにつながります。ただし、重要なのは AI をむやみに疑うことではなく、回答の根拠を確認することです。出典が自動的に示されない場合、金融プロフェッショナルは AI ツールに対し、その主張の根拠となった具体的な文書やセクションを提示するよう求めるべきです。出典を提示できない場合は、そのアウトプットをより慎重に扱う必要があります。

ここでは、信頼性が高く、適切に管理されたデータが、AI モデルそのものと同じくらい重要になります。「データが大規模言語モデル (LLM) に取り込まれる前に、その来歴、つまりどこから取得され、いつ収集され、適切な許諾のもとで利用できるのかを把握する必要があります」と、LSEG の Sales Director, Quantitative Data Solutions and AI である Prajesh Manglani は述べています。「この違いこそが、もっともらしい回答を返す AI ツールと、根拠を示すことのできる回答を返す AI ツールを分けるものです」

つまり、AI ツールは意思決定に先立つ情報の収集、分析、整理・統合にかかる時間の短縮に役立ちますが、意思決定者に取って代わるものではありません。これが、実際の利用を通じて築かれる「信頼曲線 (trust curve)」です。AI の出力に対する信頼は、検証を伴う利用を繰り返すことで築かれます。信頼できるデータを AI に活用することで、金融プロフェッショナルは AI の出力に対する信頼をより早く高めることができます。

今週から試してみる

金融プロフェッショナルは、AI の活用を始めるために組織全体への導入を待つ必要はありません。例えば、決算情報の整理・要約や顧客向けブリーフィングなど、1 週間の業務の中からリサーチに時間がかかる作業や反復的な作業を 1 つ選び、Microsoft 365 Copilot や LSEG Workspace で利用できるツールなど、すでにアクセス可能な AI ツールを使ってみましょう。AI も利用者も、継続的に活用しながら学んでいくため、AI を使い続けることが重要です。

そうして AI を使いこなす力が養われ、その積み重ねが自身の強みになっていくのです。

免責事項

LSEG のコンテンツを、当社の書面による事前の承諾なしに再発行または再配信することは禁止されています。

本書の内容は情報提供のみを目的としています。従って、本書には何ら法的効力はなく、契約の一部を形成するものでもありません。また、本書はいかなる性質のアドバイスを構成するものではなく、またそのような意図もなく、ここに含まれる記述に依拠するべきではありません。なお、本書が正確で信頼できる内容となるよう合理的な努力が払われていますが、LSEG はこの文書に誤りや脱落がないことを保証するものではありません。従って、いかなる状況においても本書の内容に依拠することはできず、独自の法律、投資、税務、およびその他のアドバイスを求める必要があります。当社および当社の関連会社は、本書またはその他のコンテンツの誤り、不正確さ、遅延、またはそれに依拠してお客様が行った行動について責任を負うものではありません。

Copyright © 2026 London Stock Exchange Group. 無断複写・転載を禁じます。