概要
清算機関は、最優先の目的である「清算会員に対して最高水準の中央清算機関を提供し、株主およびデフォルト・ファンドへの拠出者の利益を保護すること」を達成するために、堅実かつ健全なリスク管理を実施する必要があります。
LCH Ltd に関する詳細情報については、本ページ内のリンクからご確認いただけます。
LCH グループのリスク管理に関する情報 (リスク軽減手法の概要、デフォルト・ウォーターフォールの構造、および破綻管理の履歴) については、「グループ概要」タブをご覧ください。
リスク・ガバナンスとフレームワーク
リスク・ガバナンス
当グループの中央清算機関 (CCP) が直面する重要なリスクに関する事項は、関連する子会社の取締役会が選任したリスク委員会が対応します。
リスク委員会は、独立社外取締役 (INED) が委員長を務め、CCP 利用者とそのクライアントの代表者、ならびに他の INED で構成されています。各 CCP の利用者コミュニティからの追加の代表者や、CCP の上級幹部が、議決権を持たないリスク専門家として会議に参加する場合があります。
リスク委員会の議長と取締役会は、必要に応じて、取締役会のオペレーショナル・レジリエンス委員会 (ORC) の議長から助言を受けます。独立社外取締役が議長を務める ORC は、LCH の使命、価値観、および戦略的目標を支える技術、セキュリティおよびオペレーショナル・レジリエンスに関する戦略、投資、ならびに成果を確保する役割を担っています。
社内では、エグゼクティブ・リスク委員会 (ERCo) が取締役会のリスク委員会の指揮下にあります。ERCo は、最高リスク管理責任者 (CRO) が議長を務め、各清算業務の責任者、ならびにリスク管理担当およびコンプライアンス担当の上級幹部で構成されます。
小委員会とワーキング・グループは、ERCo への報告に先立ち、すべてのリスク関連事項を検討します。
リスク分類
LCH リスク・ガバナンス・フレームワークは、以下のリスク分類に対する取締役会のリスク選好/許容度を特定し、確立しています。
| 財務およびモデル・リスク | オペレーショナル・レジリエンス・リスク | 戦略的リスク | 人事および企業文化に関するリスク | 法務、規制およびコンプライアンスに関するリスク |
|---|---|---|---|---|
| 破綻管理リスク | テクノロジー・リスク | 事業リスク | リスク文化 | 法務リスク |
| 潜在的市場リスク | 事業継続管理リスク | 変革リスク | 人事および人材 | 規制およびコンプライアンスに関するリスク |
| プロシクリカリティ・リスク | 情報セキュリティおよびサイバー・リスク | レピュテーション・リスク | 業務遂行リスク |
|
| 信用リスク | 物理的セキュリティ・リスク | サステナビリティ (ESG) リスク | 監督およびガバナンス・リスク | |
| 投資および流動性リスク | 第三者リスク | 地政学的リスク | 金融犯罪 | |
| 決済、支払いおよびカストディ・リスク | データ・リスク | 不正リスク | ||
| モデル・リスク | オペレーショナル・プロセス・リスク | 財務報告および税務 | ||
| 資本リスク | ||||
| 年金リスク | ||||
| 保険リスク |
上記で特定された財務およびモデル・リスクとオペレーショナル・レジリエンスに関するリスクの管理は、リスク管理部門が定める一連のリスク方針を通して実施されます。その他すべてのリスクは、個々の事業部門によって管理されます。
各リスク方針は、リスク・ガバナンス・フレームワークおよび関連規制に定める基本的な原則および基準がどのように適用されるかを定義しており、方針の要件をどのように遵守するかを示した詳細な付属文書と手続き文書によって補足されます。
すべてのリスク方針は、少なくとも年に 1 回、社内のリスク管理委員会および取締役会リスク委員会によるレビューの対象となり、取締役会の承認を必要とします。
証拠金算出手法
証拠金
すべてのサービスにおける当初証拠金 (IM) は、清算会員が破綻した場合のクローズアウト期間中に、通常の市場環境下で発生する損失を相殺するのに十分な水準になるよう調整されており、99.7% の信頼水準で設定されています(ただし、上場金利商品については 99% の信頼水準)。適用される割合は LCH 取締役会によって承認され、LCH リスク・ガバナンス・フレームワークに明記されており、監督当局と共有されます。
追加証拠金は、ポジションの集中、逆相関リスク、流動性の低いポジション、および信用力や資本支援の低い清算会員をカバーするために課されます。
証拠金は、各清算会員とサブ口座ごとに、設定された信頼区間に基づき日次でバックテストが実施されており、清算サービス単位で月次で規制当局に、少なくとも四半期ごとにリスク委員会に報告されます。サービス単位での証拠金バックテストの結果は、四半期ごとの定量的開示資料に含まれており、本ウェブサイトの関連資料 (英語) にて閲覧可能です。
各清算サービスにおける現在および過去18 か月間の証拠金バックテストの結果は、四半期ごとの CPMI IOSCO 定量的開示資料の参照項目 6.5.3 に記載されており、本ウェブサイトの CCP Disclosures (英語) からご覧いただけます。
詳細については、証拠金モデルとそのガバナンスに関する以下のセクションをご参照ください。
証拠金モデルおよびガバナンス
モデル管理台帳
全モデルの最新の一覧 (管理台帳)が維持されています。すべてのモデルは、独立したモデル検証チームによって毎年レビューが実施されます。重要な変更およびすべての新規モデルについても、独立した検証の対象となります。
モデル台帳と検証状況は、取締役会によって毎年レビューされます。
モデル・パフォーマンスは、ポートフォリオのバックテストを通じて日々評価されています。
各サービスに適用される証拠金モデルは、左記のセクションに記載されています。
証拠金モデル分析
| 市場 | モデル種別 | 使用されている証拠金手法 | 最低ルックバック期間 | 保有期間 | パラメーターの見直し頻度 |
|---|---|---|---|---|---|
| SwapClear | VaR / 予想ショートフォール | ボラティリティ・スケーリングを用いたヒストリカル・シミュレーション | 10 年 | ハウス口座は 5 日、クライアント口座は 7 日 | 日次 |
| 上場金利商品 | VaR | ボラティリティ・スケーリングを用いたヒストリカル・シミュレーション | 10 年 | 2日 | 日次 |
| ForexClear | VaR / 予想ショートフォール | ボラティリティ・スケーリングを用いたヒストリカル・シミュレーション | 10 年 | ハウス口座は 5 日、クライアント口座は7 日 | 日次 |
| RepoClear | VaR / 予想ショートフォール | ボラティリティ・スケーリングを用いたヒストリカル・シミュレーション | 10 年 | 5日 | 日次 |
| EquityClear | VaR / 予想ショートフォール | ヒストリカル・シミュレーション | 4 年 | 3日 | 日次 |
破綻管理
LCH の CCP は、破綻管理方針に準拠した詳細な破綻管理計画と手続きを備えています。
これらは、清算会員を破綻と判断するための明確な基準と、そうした破綻事象を管理するために従うべき手順を示しています。
この方針では、商品および商品横断的なレベルの双方で、頻繁な破綻管理テスト、いわゆる「ファイアドリル」の実施も義務付けています。
CCP ルールブックは、LCH と清算会員間の関係を定めており、清算会員の破綻におけるそれぞれの権利と義務について記載しています。
デフォルト・ファンドとストレス・テスト
各サービスごとに分別された共同デフォルト・ファンドは、月次で調整され、日次でテストが行われます。これは、極端な状況を想定したシナリオに基づき、最大損失がもたらす 2 つの清算会員グループの破綻に耐えられるようにするためです。デフォルト・ファンドには、最低水準の保護を確保し、過度な相互負担を避けるための上限と下限の両方が定められています。
清算会員の拠出金には最低限度額が定められており、各会員がもたらすリスクに応じて毎月再調整されます。
CCP の資本の一部は、ウォーターフォールにおいて、非破綻清算会員の拠出金よりも先に充当されます。
ストレス損失が証拠金を大きく上回る清算会員には、上限を超過する場合や、月中に与信関連の許容水準に到達した場合、追加証拠金が課されます。
ストレス・テストおよびデフォルト・ファンドの妥当性に関する分析には、少なくとも四半期ごとにリスク委員会によるレビューが実施されます。
ストレス・テストのデータ (英語) は、以下の2 つの重要な質問に回答することを目的として設計されています。
- 自己の証拠金はどの程度安全であり、それに伴い、デフォルト・ファンドへの拠出金はどの程度保護されているのか。
- 最大でどの程度の追加拠出金を要求される可能性があるか。それはどのような状況か。
会員資格とクライアント・リスク管理
信用リスクと会員資格
LCH グループの CCP は、清算会員およびソブリンを含むその他の取引相手のカウンターパーティー・リスクを、市場指標や財務情報を継続的にモニタリングすることで評価しています。
内部信用スコア (ICS) フレームワークは、以下の項目について当該法人を評価します:
財務状況(以下を含む):
- 資産内容の健全性
- 自己資本の適正性
- 資金調達と流動性
- 収益性
業務運用能力 (以下を含む):
- 外部支援 (該当する場合)
- 業務環境
- 業務プロファイル
- リスク管理方針および手続き
- 支援およびソブリン格付け上限に関する考慮事項
格付けモデルは少なくとも年に 1 回検証され、格付けスケールのパフォーマンスは継続的にモニタリングされます。
清算サービスへの参加には最低信用スコアが必要であり、LCH 内の他のサービスへの参加を希望する既存清算会員にも、同一の参加要件が適用されます。
信用スコアが参加基準を下回った場合、証拠金が増額されます。その他の対応措置として、信用許容枠の引き下げや、エクスポージャーの強制的な削減が含まれる場合があります。
各グループ CCP の参加基準、申請手続き、および現在の会員状況など、会員資格に関するより詳細な情報については、こちらをご覧ください。
会員およびクライアントのリスク開示
LCH の清算サービスに参加する清算会員 (またはそのクライアント) であることに伴う重要なリスクは、金銭的損失のリスクです。関連するリスクシナリオの一部を以下に紹介します:
- 清算会員の破綻 – 非破綻清算会員には、デフォルト・ファンドへの拠出金を失うリスク、および追加的なデフォルト・ファンドへの拠出金を求められるリスクがあります。また各サービスには、当該サービスの清算会員に追加損失を配分する仕組みがあります。サービス終了時には代替コストが発生する可能性があり、清算会員のクライアントも、破綻管理プロセスにより損失や業務の中断を被る可能性があります。詳細についてはデフォルト規則をご参照ください。
- 会員責任の拡大 – LCHの口座で保菅されている間に、清算会員の PPS 銀行が破綻した場合に生じるリスク。詳細については、「pps-cencentration-activities」および「手続書 (Procedures) の 第 3 章」、ならびに 「FCM 手続書(FCM Procedures)」の第 3 章 をご参照ください。
- LCH の破綻 – 適用される規則については、「一般規則(General Regulations)第45 条および 46 条」、ならびに「FCM 規則 (FCM Regulations) 第 37 および 38 条」 をご参照ください。
- 市場の混乱、履行不能、取引の緊急事態、または不可抗力事由が発生した場合、一般規則第 37 および 38 条、または FCM 規則第 29 および 30 条 が適用される可能性があり、LCH が契約のインボイシング・バック (巻き戻し) やその他の措置を講ずることで、清算会員が損失を被る可能性があります。また LCH は、一般規則第 40 条および FCM 規則 第 32 条に基づき、代替通貨によって義務を履行する権利を有しています。
免責事項: 上記の記述は、LCH の清算会員および/またはそのクライアントが直面する可能性のある主要な財務リスクの概要を示したものです。本リストは網羅的なものではなく、清算会員およびクライアントは、ルールブックを確認の上、各自でリスク分析を行う必要があります。
投資リスク
投資リスクは、証拠金債務およびデフォルトファンド拠出金の担保として差し入れられた清算会員の現金を投資することによって発生します。投資は、元本が保護され、必要な時に流動性が確保できるように、たとえストレス下でも対応できる形で行われます。
これに対処するために:
- すべての投資先は、社内の信用評価に基づく最低限の信用基準を満たしている
- すべての投資は、最低限の信用基準を満たしており、政府によって明確に保証されていなければならない
- 投資ポートフォリオの平均期間は、規制基準に沿ったものとなっている
- 無担保の投資は、商業銀行への貸付総額の 5% 未満に制限されており、期間は翌日を超えてはならない
担保リスク
証拠金債務の担保として適格な現金や有価証券は、信用リスク、流動性リスク、および市場リスクが低いものに制限されています。デフォルト・ファンドへの拠出は、各清算サービスが指定する主要通貨で現金のみで行うことができます。
市場リスク、信用リスク、集中/流動性リスク、逆相関リスクや為替リスクをカバーするために、有価証券にはヘアカットや上限が設定されています。ヘアカットは、過去 10 年間のデータとストレス期間に基づき、3 日間の所要期間に基づいて、99.7% の信頼水準で計算されます。
現在受け入れ可能な担保の種類、そのヘアカット率およびその他の条件は、以下のリンクからご覧いただけます。
LCH Ltd は通常、欧州議会および理事会による 2002 年 6 月 6 日付「金融担保指令 (2002/47/EC)」第 2 条第1項(c)に定められた意味における、徴収された証拠金やデフォルトファンド拠出金の使用権を持っておらず、そのため運営規則においてもその使用権を認めていません。ただし、スポンサード会員が LCH Ltd と所有権移転契約を締結した場合、当該会員は、非現金担保の法的および実質的所有権を LCH Ltd に移転する義務を負います。