Ron Lefferts | ロン・レファーツ
Gianluca Biagini | ジャンルカ・ビアジニ
人工知能 (AI) は金融サービス分野に革新的な機会をもたらしています。大規模言語モデル (LLM)、AI エージェントなどのツールの活用により、ワークフローを劇的に簡素化し、業務効率を向上させ、意思決定に役立つ実用的なインサイトへのアクセスを向上させることができます。
しかし、金融サービスにおける AI の成功は、信頼性の高い確かなデータに依存しています。どのようなユースケースであっても、AI は膨大な量のデータを必要としますが、金融分野で効果的に活用するには、高品質なデータが不可欠です。金融サービスの専門家は、多くの場合、厳格な規制環境下で業務を行っており、正確性が確保されなければ、自信を持って行動することはできません。正確性に欠けるデータは、金融データの世界では決して許容されません。
インターネット上のデータをスクレイピング(収集)する LLM は、実績ある信頼性の高い金融データ・プロバイダーに対して困難な課題を突きつけているように見えるかもしれません。しかし、こうした公開情報源からのインプットでは、金融セクターが求める結果を生み出すことはできません。LLM は、公開情報から最近の金融データを抽出することはできますが、金融機関は、過去の非公開データや独自データにも基づいて意思決定を行います。データに関する権利と制約が複雑に絡み合う環境においては、データの出所を追跡し、どのように利用できるかを理解するために、包括的で信頼性の高いメタデータへのアクセスも必要です。金融業界が求めるデータ要件は、公開情報源のみに依存する LLM が提供できる範囲をはるかに超えています
LSEG は、金融サービス分野における AI 活用の拡大を支えるために信頼できるデータを提供します。LSEG のデータの深さ、幅広さ、質の高さは他に類を見ないものです。LSEG は、オープンで特定の LLM に依存しないインフラ重視のパートナーシップ・アプローチを通じてAI の導入を可能にする、正確で信頼性が高く、タイムリーなデータを提供します。つまり、LSEG のデータはあらゆる場所で活用することが可能です。
金融セクターにおける AI の導入: 機会と課題
金融サービスにおける AI のユースケースは数多く存在します。既に確立されたものもあり、例えば、アルゴリズム取引は、以前から金融業界では一般的となっています。しかし、LLM と AI エージェントの急速な進化により、以前の技術では解決できなかった問題の解決に対応する新たな可能性が生まれています。こうしたツールが効果的に導入されれば、金融サービスの専門家の働き方、協業の仕方、意思決定のあり方を根本的に変革し、金融業界に新たなスピードとこれまでにない深いインサイトをもたらすことができます。
LSEG はどのように AI を活用し、金融サービスのプロフェッショナルの働き方を刷新しているのでしょうか。
生産性の向上: LSEG は、金融サービスのワークフローに AI を組み込むことで、効率性、明確性、スピードの向上を実現しています。複雑な質問に平易な英語で回答したり、分析用のコードを生成するなど、自然言語によるやり取りを可能にすることで、チームによる情報の発見や業務の遂行が容易になります。Microsoft Teams との連携により、実用的なインサイトを直ちに提供し、金融業界全体でのコラボレーションを促進しています。 より深いインサイト: LSEG は、データ&アナリティクス・ワークフローの主力ソリューションである Workspace を通じて提要される、AI を活用したリサーチ機能や取引ツールにより、データとマーケット・インテリジェンスの世界をさらに拡大しています。トレーダーやアナリストは、AI によるニュース要約、経済予測、市場センチメントの追跡などを通じて、より多くの情報をより迅速に活用し、新たなトレンドを発見し、リアルタイムでより賢明な意思決定を行うことができます。 |
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金融サービスにおいて AI の可能性を実現できるかどうかは、その正確性に懸かっています。金融機関は、誤りが起きないという確信がなければ、AI エージェントを日常業務の遂行に大規模に活用することはできません。アナリストやトレーダーは、AI のインサイトが検証可能な事実に基づいていることが確認できない限り、それに基づいて行動することはできません。AI を金融サービス分野で最大限に活用するには、高度な信頼性が求められます。
金融サービスにおける AI のユースケースの中心にあるのは、データの取得と活用です。市場はデータによって動き、AI は金融システムの「パイプ」を変革することで、より迅速かつ直接的にインサイトを引き出すことを可能にします。
例えば、ポートフォリオ・マネージャーは、AI エージェントを利用して、ポートフォリオのリバランスなどの日常業務を高速化できるかもしれません。AI エージェントは、シミュレーションを実行し、アセット・アロケーションを提案し、アンダーパフォームしている銘柄を明らかにすることができます。これにより、ポートフォリオ・マネージャーは時間を節約し、人間の知性を必要とするより複雑な業務に集中することを可能にします。しかし、そのために不可欠なのは、AI エージェントのインサイトを導くために使用されたデータが正確で信頼性の高い、妥当性を有するものであること、そしてポートフォリオ・マネージャーがそうしたインサイトに基づいて自信をもって行動できることです。AI エージェントが生み出すインサイトは、日々再現可能である必要があります。
これは、リスク・モニタリング、市場センチメントの追跡、経済予測など、金融サービスにおける無数の AI ユースケースにも同様に当てはまります。AI は、ワークフローを効率化し、インサイトを深化させ、意思決定を高速化できる大きな可能性を秘めています。しかし、信頼できるデータがなければ、それは実現しません。
金融サービスにおける AI の活用を拡大するための信頼できるデータ: LSEG の優位性
LSEG は世界の金融セクターにとって定評ある信頼性の高いデータ・パートナーです。170 か国以上で 44,000 以上の法人顧客に金融データ、分析、ニュース、インデックス商品を提供しています。LSEG のデータは、世界最大手クラスの多くの規制対象金融機関における重要なプロセスと意思決定に欠かせない要素であり、こうしたお客様が必要とする最高水準の精度と正確性の基準を満たしています。LSEG は、グローバルな金融システムの中心に位置するという立場を生かし、お客様が AI を大規模に導入するために必要な信頼できるデータを提供しています。
比類のないカバレッジ
AI を有効活用するには膨大なデータを必要とします。LSEG のデータは詳細さと幅広さに関して他に比肩するものがありません。リアルタイム・データ、プライシング、リファレンス、時系列データ、機械読み取り可能コンテンツに加え、企業データ、リサーチ、ニュース、ESG データから構成される金融セクター最大クラスのポートフォリオを提供しています。LSEG は何百もの多様な公開および非公開ソースのデータをライセンスし、世界中の専門パートナーと協力していますが、データの半分以上は独自のものです。LSEG はデータ・コンテンツ、モデル、メソドロジーに関して法的所有権を有しており、顧客向けのアプリケーションに当社独自の分類体系を組み込んでいます。
LSEG のすべてのデータセットは強化されています。独自のシンボロジーと識別子から標準化、正規化、タグ付け、センチメント分析、ポイント・イン・タイム、アナリティクスまで、LSEG はお客様のためにワークフロー全体を通じて付加価値を生み出します。LSEG のリアルタイム・データは、お客様のワークフローに深く統合され、専用のネットワークを通じて提供されます。さらに、9,000 万以上の銘柄を 30 年以上にわたって追跡している Tick History のように、複製が不可能な独自のデータセットも扱っています。LSEG は、単なる公開情報源のデータに比べて意思決定上はるかに有用なデータと、はるかに大きな価値をお客様に提供します。
世界をリードするデータ品質
LSEG はデータ品質に誇りを持っています。LSEG のデータをインプットとして使用しうることで、お客様はAI が生成するアウトプットを信頼することができます。ソースからデータベースに至るまでのデータ管理プロセスの各段階において、データ品質を確保するためのスキャンとクレンジングを行っています。これは、お客様にデータを提供する前段階だけでなく、当社製品内で利用可能となった後も実施されます。コンテンツ・セット全体で、約 65 万件のチェックが自動的に実施され、品質と一貫性を確保しています。
LSEG は自社開発のテクノロジーを活用し、データ品質に関する問題をリアルタイムで追跡および報告します。さらに、データの信頼性に関する取り組みの一環として、データセットに専任のオーナーを配置し、お客様がデータに関する疑問を誰に照会すればよいかを特定できるようにしています。LSEG はデータ品質に責任を負い、お客様が安心して AI とデータを活用するために必要なサービスを提供します。
責任を果たす: LSEG によるデータ品質の測定方法
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柔軟にデータを提供
LSEG は、いつでもどこでもお客様が選んだ時と場所で AI を導入するためのデータを提供します。例えば、LSEG の Workspace プラットフォームを通じて AI ツールを使用し、お客様のニーズに合わせた信頼できるデータと実用的なインサイトにアクセスできる、カスタマイズされたサービス体験をお届けします。Microsoft Teams と Office365 に統合されているため、かつてないほど簡単にインサイトを生成し、コラボレーションすることができます。
一方、データを直接提供することも可能です。LSEG は、オープンで特定の LLM に依存しないインフラ志向のパートナーシップ・アプローチによって、MCP サーバーと AI 対応 API を通じたワークフローを実現します [注 1] 。Microsoft、Google、Databricks が LSEG と提携しています。なぜなら、LSEG のデータは AI で処理できるように既に構造化されており、金融セクターがそのデータを信頼しているからです。LSEG は、世界最大手クラスの金融機関との緊密なパートナーシップを次のレベルへと引き上げ、金融機関が新たな方法で LSEG のデータを利用し、AI の活用を組織全体に拡大できるようにしています。
権利と規制に関する明確化
LSEG は、プライバシーからデータ・ローカライゼーション規則、ライセンス供与、IP まで、データに関する権利と規制が複雑さを増す環境の中でも、お客様が AI を責任ある方法で導入できるよう支援しています。LSEG のデータのユーザーは、データの系列を情報源まで追跡し、データがどのように処理・集約され、強化されているかを明確に把握できます。LSEG は、データの機密性とプライバシーに関する明確な指針を提供し、各データセットがどのように使用できるか、また使用できないかを明示しています。AI に関しては、データのライセンス供与についての理解が非常に重要です。お客様は、例えばデータを利用して新製品を開発・販売する場合に、AI の使用が現在の契約に違反しないかどうかを把握する必要があります。LSEG は、お客様が契約の限界を理解し、法的な懸念を抱えずに AI を導入できるように支援しています。
LSEG は、170 か国以上で事業を運営し、お客様にサービスを提供しており、世界各地の法律と規制を遵守するとともに、お客様による法令遵守の支援にも取り組んでいます。LSEG はパートナーや業界団体と協力して、最新の業界標準を策定し、市場をリードするデータ・ガバナンスの枠組みを通じてベストプラクティスの導入を推進しています。金融機関がデータへのアクセスとその利用に慎重になるのは当然です。しかし、LSEG がパートナーなら、お客様は安心して義務を遵守し、規制リスクを最小限に抑え、風評被害を回避できます。
業界の今後
金融セクターには、新たなテクノロジーを導入し、活用してきた長年の歴史があります。金融セクターは絶えず進化しながら、効率性を向上させ、協力関係を育み、新たな成長機会を開拓しています。AI は革新的なポテンシャルを持つ類い稀な技術であり、わずか数年前には想像もできなかった方法で金融サービスを再編することが期待されます。しかし、あらゆる画期的技術がそうであるように、AI の活用を業界全体に拡大できるかどうかは信頼性に懸かっています。
お客様は LSEG をパートナーとすることで、自社のプロセスと意思決定に AI を組み込み、その AI が生み出す結果が正確で信頼性の高いデータに基づいているという確信を得ることができます。LSEG のデータの詳細さ、幅広さ、品質は公開情報源をはるかに上回ります。LSEG はこうしたデータを柔軟に提供しつつ、関連する権利、制約、規制についても明確さを確保しています。LSEG は、金融セクター全体との緊密なパートナーシップに基づき、お客様が選択したあらゆる場所で、信頼できるデータを提供し、AI の大規模な導入を加速しています。
出所
[1]モデル・コンテキスト・プロトコル (MCP) は、AI モデルが外部のデータ、ツール、システムと安全に接続するためのオープン・スタンダードです。MCP サーバーは、サーバーまたはクラウド上にホストされているプログラムであり、AI モデルが上記の機能を使用することを可能にします。 | 注 1 に戻る
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