Catherine Yoshimoto
Sarah McCarthy
「ナイーブ」な構築手法でも設計上の判断は必要
1984 年に開始されたラッセル米国指数は、「ナイーブ(naïve)」な指数構築手法を採用しています。これは、投資機会に関する特別な知識を前提とすることなく、投資家が米国株式市場全体への投資から得られるリターンとリスクを反映することを目指したものです。
このナイーブなアプローチにより、ラッセル米国指数は一部の競合指数とは異なる特徴を持っています。どの銘柄をいつ指数に組み入れるかを決定する選定委員会は存在せず、また、指数への採用に先立って企業に収益性が求められることもありません。
米国に上場しており、そのほかの指数採用基準 (英語) を満たしていれば、その銘柄はラッセル指数に組み入れられます。指数ルールは、客観性、透明性、そして理解のしやすさを重視して策定されています。
もっとも、だからといって指数が自動的に運営されるわけではありません。指数運営者は依然として、重要な判断を下す必要があります。例えば、新規上場企業を IPO 当日に組み入れるべきなのか、数日後なのか、翌月なのか、翌四半期なのか、あるいは翌年なのか、といった判断です。
また、国籍の判定、上場市場、企業構造、採用可能な株式種類、最低浮動株比率、最低議決権基準といった指数設計上の論点についても、唯一の正解が存在するわけではありません。
こうした設計上の判断を行う際、指数運営者はベンチマークとしての本来の目的を維持しながら、異なる顧客層が持つ場合によっては相反するニーズのバランスを取らなければなりません。
ラッセル米国指数におけるこれまでの IPO 銘柄の組み入れ
ラッセル米国指数は、設定当初、新規上場企業の組み入れを指数全体のリコンスティテューション(定期見直し)スケジュール (英語) に合わせて行っていました。具体的には、1984 年から 1987 年までは四半期ごと、1989 年までは半年ごと、その後は 1989 年から 2004 年まで年 1 回の見直しに合わせて、新規上場企業を組み入れていました。
2004 年以降、FTSE Russell はラッセル米国指数への IPO 銘柄の組み入れを四半期ごとに実施しており、新規上場企業の組み入れ頻度は、リコンスティテューションの頻度を上回るようになりました。
では、実際にはどのような結果となっているのでしょうか。2010 年以降、小型株指数であるラッセル 2000 指数では、IPO 銘柄の組み入れ数は 1 四半期当たり平均 21 銘柄でした。一方、大型株指数であるラッセル 1000 指数では、同平均はわずか 3 銘柄にとどまっています。
もっとも、IPO 市場は循環的な性質を持つため、特に IPO 銘柄の比重が高いラッセル 2000 指数では、組み入れ数は大きく変動してきました。四半期当たり数銘柄にとどまる時期がある一方で、2021 年第 3 四半期には 60 銘柄を超える IPO 銘柄が組み入れられました。
ラッセル米国指数における四半期ごとの IPO 銘柄組み入れ数
出所:FTSE Russell、2010 年第 1 四半期から 2026 年第 2 四半期までのデータ。2026 年第 2 四半期のデータは、2026 年 6 月 29 日の米国株式市場寄り付き時点で有効。過去の実績は将来のリターンを示唆または保証するものではありません。
メガキャップ IPO の上場見通しを受け、指数利用者への意見募集を実施
2026 年には新たな課題が浮上しました。SpaceX、OpenAI、Anthropic を含む複数の「メガキャップ」IPO 候補企業が米国市場に上場する可能性を踏まえ、FTSE Russell は 2026 年 2 月、こうした大型の新規上場企業をラッセル米国指数により迅速に組み入れるべきかどうかについて、市場関係者に意見を求めました (英語) 。
また、これらのメガキャップ企業の一部では、上場時点で公開される株式比率が限定的になる可能性があることから、最低浮動株比率 5% および最低議決権比率 5% という現行基準を緩和すべきかどうかについても、市場関係者の意見を募りました。
大型の新規上場企業をラッセル米国指数へ迅速に組み入れる主な理由は、指数が常に米国株式市場全体をより的確に反映できるようになるためです。
また、早期組み入れルールを導入することで、指数連動ファンドは、次回の四半期ごとの指数リバランスを待つことなく、上場日に近いタイミングで大型 IPO 銘柄へ投資できるようになります。その結果、指数とのトラッキングエラーの抑制にもつながります。
さらに、早期組み入れルールの導入により、ラッセル米国指数はFTSE Russellの他の主要な株式ベンチマークとの整合性を高めることができます。1984 年に算出が開始された FTSE 100 指数 (英語) では、設定当初から大型の新規採用候補銘柄に対する早期組み入れルールが導入されています。また、FTSE All-World 指数を含む FTSE Global Equity Index Series(FTSE GEIS)でも、大型企業の早期組み入れが認められています。
一方で、米国の競合株式ベンチマークと比較すると、ラッセル米国指数は、従来から新規上場企業を比較的早い段階で組み入れる方針を採用してきた点も、強調しておく必要があります。この方針により、ラッセル 2000 指数およびラッセル 1000 指数は、一部の競合指数よりも 10 年以上早く、後に市場を代表する企業となる銘柄を指数に組み入れてきました。
ラッセル米国指数における IPO 銘柄の迅速な組み入れ実績
出所 : FTSE Russell、2026 年 4 月 30 日現在。Russell 3000 の追加指数は、Russell 2000(R2)の日付が記載されていない限り、Russell 1000(R1)のものです。Russell 3000 Index の開始日は 1984 年 1 月 1 日です。インデックス開始日以前の運用実績はすべてバックテスト運用実績です。過去のパフォーマンスは、将来の結果を保証するものではありません。重要な開示事項については末尾を参照してください。* S&P 1500 Index の開始日は 1995 年 1 月 31 日であるため、この日以前のインデックス・パフォーマンスは入手できません。S&P 500 がまだ当該銘柄を追加していない場合、パフォーマンスは 2026 年 4 月 30 日時点のものです。*調整後終値
ラッセル米国指数の新ルール:大型 IPO 銘柄を上場後 5 営業日で早期組み入れ
FTSE Russell は 2026 年 5 月 26 日、顧客から寄せられた意見を踏まえ、ラッセル米国指数に新たな早期組み入れルールを即時導入することを発表しました。一方で、最低浮動株比率および最低議決権比率に関する既存のルールについては、変更を行いませんでした。
この新たな早期組み入れルールにより、Russell Top 500 Index(ラッセル 3000 の構成銘柄のうち時価総額上位 500 社)に採用される規模の企業は、新規上場後 5 営業日目の取引終了後に指数へ組み入れられることになります。
なお、このルールには、ラッセル指数の年 2 回のリコンスティテューションに先立つロックダウン期間や、IPO の種類に関する一定の制限が設けられています。詳細については、FTSE Russell が公表しているテクニカル・ノーティス (英語) をご参照ください。
早期組み入れ対象 IPO 銘柄が指数に与える影響
2026 年に予定されている IPO の中には、非常に大規模な案件が含まれる可能性があることから、新規上場企業が米国株式市場全体に与える影響について、多くのメディアが取り上げています。
近年、少数のメガキャップ・テクノロジー企業がラッセル 1000 指数、ラッセル 2000 指数、ラッセル 3000 指数 (英語) のと同様に、新たに上場する大規模企業も市場において重要な存在となる可能性があります。
一方で、これらの新規上場企業は上場直後に指数へ組み入れられるのではなく、取引開始後 5 営業日目の取引終了後に組み入れられるため、IPO 直後の株価変動の影響を一定程度抑えることが期待されます。
また、ラッセル米国指数の早期組み入れ対象となる IPO 銘柄は、浮動株調整後時価総額に基づいて指数へ採用される点も重要です。言い換えれば、ある企業が浮動株比率 5% で上場した場合、指数算出に使用される時価総額は企業全体の時価総額ではなく、その 5% 相当分のみとなります。
このように、投資家が実際に取引可能な株式のみを反映するために株式数を調整する手法は、ラッセル米国指数の設計当初から採用されている考え方の一つです。そして、この方針は 40 年以上経った現在も維持されています。
すべての米国株価指数が同様の浮動株調整を採用しているわけではないため、指数手法を評価する際には、この重要な要素にも注目する必要があります。
証券市場の変化に応じて、指数手法の改善や見直しが行われることは避けられません。しかし、ラッセル米国指数の目的は変わっていません。それは、米国株式市場の実態をできる限り正確に反映することです。
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