AI エージェントに潜む見えにくいコスト構造 — LSEG の MCP コネクタが実現するトークン効率の向上

Emily Prince

エンタープライズ AI 部門グループ責任者

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要旨

LSEG の MCP コネクタにより、エージェント型ワークフロー向けに設計された標準化インターフェースを通じて、AI エージェントに信頼性の高い、ライセンス取得済みの LSEG コンテンツとサービスへのアクセスを提供します。

エージェント型ワークフローでは、コストはユーザーのプロンプトだけでなく、モデルが利用を検討するツール、実行する呼び出し、および各リクエストの後に返されるデータによっても左右されます。

LSEG の MCP コネクタは、明確なツール指示、精度の高い検索と識別機能、そして簡潔なレスポンスにより、不要なトークン消費の削減を支援するよう設計されています。

これにより、誤ったツール呼び出しの削減、モデルが処理するデータ量の削減、ワークフローの高速化、そして利用規模の拡大に伴うコスト効率の向上が期待できます。 

モデル、プロンプト、利用可能なツール、および後続の処理に引き継ぐコンテキストは、お客様が引き続き管理することになります。LSEG の役割は、データ接続を構造化し、適切なガバナンスを確保したうえで、効率的なものにすることです。

AI エージェントは、企業によるマーケットデータ活用のあり方を変えつつあります。金融機関が AI の実証実験段階から本格運用へ移行する中で、その課題も変化しています。企業が求めているのは、単に推論能力を備えたモデルだけではありません。信頼性が高く、適切なアクセス権限が設定された質の高いデータに対して、効率的かつ継続的に、大規模な環境でもアクセスできるモデルです。人が情報を検索し、抽出し、利用できる形に整える代わりに、AI エージェントが信頼できるデータソースに直接接続し、必要な情報を取得して、ワークフロー内で利用できます。

これこそが、LSEG の MCP コネクタが目指すものです。価格データ、ファンダメンタルズ、リファレンス・データ、業績予想、債券分析、ニュースをはじめとする LSEG の幅広いコンテンツに、AI エージェントが直接アクセスできる環境を提供し、実運用や大規模利用に適した形で活用できるようにします。

マーケット参加者にとってこれが重要である理由は、最も有用なエージェント型ワークフローが、単純な一度きりの情報検索では完結しない点にあります。

  • ポートフォリオ・マネージャーは、エージェントを利用して発行体のスクリーニング、バリュエーション指標の比較、ニュースのモニタリング、ポートフォリオ全体のエクスポージャーの分析などを行うことができます。 

  • リサーチ・アナリストは、ある企業を起点に、関連する銘柄、業績予想、ファンダメンタルズ、価格データ、同業他社比較へと調査を進めることができます。  

  • リスク・マネージャーは、ポートフォリオ、アセット・クラス、シナリオにわたるエクスポージャーを把握する必要があります。 

  • データ部門やテクノロジー部門は、不必要な複雑さやコストを増すことなく、ガバナンスの確保されたデータを AI システムに提供できます。

AI エージェントの真価は、精度を損なうことなく、さまざまなデータタイプや分析プロセスを横断して活用できる点にあります。しかし、その一方でモデルが有用な回答を生成するまでに、どれほどの情報を読み取り、判断し、処理しなければならないかという重要な疑問が生じます。

そこで重要になるのが、トークン効率です。 

トークン効率は、単にコストの問題だけではありません。使いやすさに関わる問題でもあります。不要な呼び出しや無関係なコンテキストが少ないワークフローは、より高速で、規模の拡大が容易になり、本番環境でも一貫した運用を実現しやすくなります。トークンとは、大規模言語モデル (LLM) が処理する情報の単位です。ツールを使用するワークフローでは、モデルはユーザーのリクエストだけでなく、会話コンテキスト、ツールの説明、スキーマ、ツールの出力結果、さらには前のステップから引き継がれたデータまで処理する必要があります。ステップ数の少ないワークフローでは、こうしたオーバーヘッド (付随する処理負荷) は一見大きくないようにみえるかもしれません。しかし、エージェントが複数回にわたって検索、識別、情報取得、比較、回答の改善を行う複雑なワークフローでは、オーバーヘッドが急速に増大する可能性があります。

LSEG の MCP コネクタは、利用可能なデータの幅広さや深さを損なうことなく、不要なトークン消費を削減することで、トークン効率の向上を支援するよう設計されています。その目的はシンプルであり、モデルがより迅速に適切なデータへ到達できるようにし、本当に重要な情報だけを読み込めるようにすることです。

トークン効率が重要な理由

AI エージェントがデータを利用する場合、通常、質問を理解し、必要な情報を判断し、適切な機能を選択し、結果を取得し、返された情報に基づいて推論するという流れで処理を進めます。多くのワークフローでは、このプロセスが繰り返されます。

トークン消費の中には価値のあるものもあります。より豊富なコンテキスト、より深い分析、そしてより質の高い回答を可能にするためです。一方で、回避できるトークン消費もあります。モデルが誤ったツールを選択したり、質問への回答にならない結果を受け取ったり、データに付随する大量の無関係な構造情報を読み込まなければならなかったりすると、結果の改善につながらないままトークンが消費されます。

そのため、AI エージェントを大規模に実用化するうえでトークン効率が極めて重要になるのです。データ接続が価値を発揮するのは、エージェントが実際のワークフローで繰り返し利用でき、そのたびに発生するオーバーヘッドが制約とならない場合です。

違いを生む 2 つの設計上の選択

LSEG は、不要なトークン消費が発生しやすい 2 つの領域に着目しています。

まず、モデルは、どのデータ機能を利用すべきかを理解する必要があります。MCP において、ツールとはモデルが呼び出すことのできる機能を指します。例えば、金融商品の検索、価格データの取得、企業識別子の特定、データセットの取得、分析モデルへのアクセスなどが含まれます。ツールに関する指示が明確であるほど、モデルは適切な選択をしやすくなります。

次にモデルは、レスポンスを読み込む必要があります。金融データサービスでは、繰り返し使用されるフィールド名、メタデータ、書式情報など、システムにとっては有用であっても、必ずしもモデルの推論には有用ではない情報を含む、大量の構造化データが返される場合があります。こうした情報をすべてモデルに渡してしまうと、モデルは必要以上の情報を読み込むことになります。

LSEG の MCP コネクタは、こうした 2 つの領域における無駄を削減することを重視して設計されています。呼び出し前のツール指示をより明確にし、呼び出し後のレスポンスをより簡潔にしています。

特長 1: 明確なツール指示による不要な呼び出しの削減

LSEG の MCP コネクタの第一の特長は、利用可能なツールの説明や、構成方法にあります。

大規模なデータ環境に接続するモデルには、実行可能な選択肢が多数用意されている場合があります。それらの機能の説明が曖昧だったり、役割の違いが不明瞭なまま重複していたりすると、モデルは何を実行すべきか判断するためにより多くの作業を必要とします。目的には近いものの、必ずしも適切ではないツールを呼び出してしまったり、質問への回答にならないデータを受け取ってしまう可能性があります。その場合、モデルは後から修正し、再度試行しなければなりません。

こうした誤った選択のたびにトークンは消費され、遅延が増え、一貫性のないワークフローにつながる可能性が高くなります。

LSEG は、ツールに関する指示を明確かつ具体的にし、金融市場データが実際に利用される方法に合わせることで、こうした不確実性を低減しています。各機能については、その機能で何を行うのか、いつ使用すべきか、どの情報を必要とするのかをモデルが理解できるよう説明されています。また、適切な企業、発行体、金融商品、取引所、ベンチマーク、イールドカーブなどを正確に特定することが重要となる場合には、検索および識別機能によって、より詳細なデータ取得を行う前にエージェントが対象を正確に把握できるよう支援します。 

不要な呼び出しを発生させないことが、一番のコスト削減につながります。モデルがより早い段階で適切な経路を選択できれば、失敗した試行や重複したリクエスト、さらにはモデルがそれらを読み込み、修正しなくてはならない余分なコンテキストを回避できます。

実務上のメリットは、回避可能な呼び出しの削減、ワークフローの高速化、トークン効率の向上です。それでいて、エージェントは引き続き LSEG の幅広いコンテンツにアクセスできます。

特長 2: 簡潔なレスポンスによる不要な読み込みの削減

2 つ目の特長は、ツールの呼び出し後に返されるレスポンスにあります。

未加工データのレスポンスは、モデルが必要とする情報量を大幅に上回る場合があります。例えば、モデルが複数の企業や金融商品についての値を要求した場合、非効率的なレスポンスでは、各レコードで同じフィールド名、メタデータ、構造上の書式情報が繰り返されることがあります。データそのものに価値があっても、それに付随する情報によって余分なトークン消費が発生するのです。

LSEG の MCP コネクタは、クエリが必要とする情報に合わせてレスポンスを構成するよう設計されています。つまり、関連するレコードやフィールド、そして適切な粒度の情報を返します。レスポンスは、読み飛ばさなければならない未加工データオブジェクト全体をそのまま渡すのではなく、モデルが処理しやすい形で整理されています。

これによりデータの品質や情報の深さが損なわれることはありません。削減するのはデータに付随する回避可能なオーバーヘッドです。 

モデルの読み込む情報量が減ることで、トークン効率は向上します。

金融市場においては、ガバナンスを損なうことなく、効率的なアクセスを実現しなくてはなりません。LSEG の MCP コネクタは、信頼性の高い、ライセンス取得済みコンテンツへの構造化された接続を提供することで、この要件を支援するよう設計されています。一方で、利用するモデル、プロンプト、ツール、コンテキストについては、引き続きお客様が管理します。

ワークフローがどう変わるか

一般的なデータ接続、または最適化が不十分なデータ接続

  • モデルは曖昧または重複するツールを確認する
  • モデルは目的には近いものの適切ではないツールを選択する可能性がある
  • 誤った、または不完全な結果が返される
  • モデルは再試行し、トークンの消費量を増やす
  • データ量の多い未加工オブジェクトがモデルに渡される
  • 回避可能なトークン消費、遅延、運用上の負荷が増加する

LSEG MCP コネクタのアプローチ

  • モデルは明確で具体的なツール指示を確認する
  • モデルはより早い段階で適切な機能を特定する
  • 関連性の高い結果が返される
  • レスポンスがクエリに合わせて構成される
  • モデルは不要な付随情報を抑えた形で回答を受け取る
  • トークン効率が向上し、ワークフローが高速化され、コスト効率が改善する

重要なのは、すべてのトークンを排除できる、または排除すべきだということではありません。目的は、残るトークンが有効に活用されるようにすることです。合理的なトークン消費は、より良い推論、より幅広いコンテキスト、より質の高い回答につながるものであるべきです。不要な再試行や曖昧なツール選択、繰り返し付加される余分な構造情報のために消費されるべきではありません。

LSEG の AI 戦略は、プラットフォーム、モデル、ワークフローを問わず、お客様が必要とする場面で、信頼性の高いデータや分析を利用できるようにすることを軸としています。

こうしたアプローチが大規模利用で重要な理由

小規模な試行段階では、非効率性は見過ごされがちです。モデルは、1 回不要な呼び出しを行ったり、1 回データ量の多すぎるレスポンスを読み込んだりしても、有用な回答を生成できる場合があります。

しかし、企業のワークフローでは事情が異なります。エージェントは複数のユーザー、ポートフォリオ、アセット・クラス、データ種別、分析プロセスにまたがり処理を実行する場合があります。そこでは小さな非効率性が積み上がっていきます。1 回の処理で生じるわずかな余分なコンテキストも、何千回ものやり取りで繰り返されれば、その影響は大きなものとなります。

だからこそ、モデルとデータの境界面が重要になるのです。

LSEG は、お客様のモデル推論を実行したり、トークン使用量を管理したりすることはありません。LSEG が管理するのは、MCP コネクタを通じて提供するツールの品質、返されるデータの構造、そして LSEG のコンテンツを AI システムで利用しやすい形にする仕組みです。 

どのモデルを利用するのか、どのツールを利用可能にするのか、どのようなプロンプトを記述し、どのようなコンテキストを次のステップへ引き継ぐかといったワークフローの構成については、お客様が引き続き管理します。LSEG の役割は、ライセンス取得済みの金融データへの接続を、可能な限り構造化され、適切なガバナンスが確保され、効率的なものにすることです。

ノイズのない幅広いコンテンツ

LSEG の MCP コネクタの価値は、まずコンテンツの幅広さにあります。信頼できる市場データ、リファレンス・データ、ファンダメンタルズ、業績予想、分析、ニュースなどの幅広いコンテンツを、お客様の利用権限に応じて AI ワークフロー内で直接利用することができます。

しかし、コンテンツの幅広さだけでは十分ではありません。エージェント型 AI が金融市場で機能するには、その幅広いコンテンツが正確で、適切な利用権限に基づいて提供され、効率的に利用できる必要があります。エージェントが説明が不明確なツールの中から必要なものを探したり、曖昧なエンティティを照合したり、データ量の多すぎるレスポンスを処理したりしなければならない場合、幅広いコンテンツを効率的に活用することは難しくなります。

LSEG の MCP コネクタは、こうした幅広いコンテンツを活用できるよう設計されています。明確なツール設計が、モデルによる適切な処理経路の選択を支えます。検索と識別により、適切なエンティティ、金融商品、発行体を特定できます。簡潔なレスポンスにより、付随情報ではなく答えそのものに集中できます。こうした設計上の選択を組み合わせることで、エージェント型 AI が最も価値を発揮するワークフローにおいて、不要なトークン消費を抑え、トークン効率の向上につなげています。

トークンは、より良い推論や、より質の高い回答につながる場合に消費されるべきです。LSEG の MCP コネクタは、それ以外のトークン消費、つまり、そうしたデータにたどり着くまでに生じるオーバーヘッドを可能な限り小さくするように設計されています。どのような環境で AI ワークフローを構築する場合でも、LSEG の MCP コネクタは、オープンで適切なガバナンスが確保され、拡張性が高く、実運用を見据えて設計された接続を通じてお客様を支援します。 

コンテンツの幅広さこそが、LSEG に接続する理由です。そして、その接続基盤を支える技術の設計こそが、そうした幅広いコンテンツを繰り返し、大規模に活用できるようにしているのです。

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